【高校物理】プリズムの屈折

2019年6月12日

このブログ記事は光の屈折に関してですが、本題は、「望遠鏡の接眼部分で入射光の角度を変える部品 “天頂プリズム”に、『なぜ鏡を使わないでプリズムを使うの?』」ということです。(マイナーながら実際は天頂ミラーもあります)

なんで鏡をつかえばいいのにわざわざプリズムを使うの?

それは、以下のような理由によります。

鏡は光を反射しますが、反射率は100パーセントではなく、光を吸収してしまいます。吸収された光は熱エネルギーに変換されます。

ところが、プリズムを使う場合は、反射率を100パーセントにできるのです。鏡の反射率は95パーセント程度です。

望遠鏡の、接眼部分の角度を変える部品である天頂プリズムは、望遠鏡に入ってくる光を45度曲げるようになっていますが、それがプリズムでできているのは望遠鏡を使ったことのある人ならご存知かと思います。ここに使われているのが鏡でなくプリズムである理由は、プリズムを使うことにより100パーセントの反射、つまり全反射が得られることを利用するためです。

(ただし実際には、プリズムを使った場合でも、プリズム表面での反射率自体は100パーセントにはできますが、プリズム自体を光が通る際に起こる光の吸収があるので、天頂プリズムの反射能力としては反射率100パーセントとはなりません。望遠鏡で太陽を観察した際に顕著にわかることですが(プリズムがやたらに熱くなる)、プリズム自体の媒質も光を吸収するし、吸収された光はやはり熱エネルギーに変わるのです)

プリズムから外部(空気)へ光が進行する場合を考えます。簡単のために空気の屈折率を \( 1 \) として考えると、プリズムの屈折率を \( n \) とした場合、臨界角を \( \theta \) とすると \( sin\theta = 1/n \) です。全反射を起こすための入射角の閾値である臨界角は、屈折角が \( 90° \) となるときの入射角です。プリズムに使う物質を選んで臨界角を \( 45° \) 以内にすることができれば、プリズム内から入射角 \( 45° \) で進む光のうちの、外部へ出ていく光(屈折光)は 0 になるから、そのようにして全反射を起こすことができるのです(上図)。臨界角を \( 45° \) 以内にするということは、\( sin45°  > sin\theta = 1/n \) 、つまり \( sin45° > 1/n \) にすることだから、\( n > 1.415 \) になるような大きい屈折率ならば望遠鏡の接眼部で光を\( 45° \) 曲げるためにつかう天頂プリズムとしてその材質が利用できるということになります。光学機器にはSCHOTT社のN-BK7という光学ガラスがよくつかわれますが、その屈折率は\(1.5\)程度です。

 

物理学的プチ問題:鏡が光を吸収して、それが熱エネルギーに変換されるなら、一見、鏡の温度は上昇し続けることになりそうですが、実際は温度上昇は適当な温度でとまり、そのようなことにはなっていません。では鏡の温度が上昇し続けないのは、なぜなのでしょう?あるいは、どのような物理プロセスによるのでしょう?

ヒント:カギとなる物理現象は4文字の 〇〇〇〇 という現象です。(この現象は高校の物理学では習いません!すみませんがんばろー) でもそんな物理現象しらなくても、わかります。吸収の対義語、それは…?

ヒント2:「吸収」「放出」「平衡」という3つの言葉を用いて簡潔に述べなさい。シュテファン=ボルツマンの法則を参考にし、「温度」という言葉を用いることができたらなお良い。

シュテファンボルツマンの法則:温度 \(T\) の物体からは単位時間あたり \( I = aT^4 \) の熱(電磁波)が放出される。

答え:鏡の温度が一定の温度に達すると、鏡が吸収したエネルギーと放出する熱が等しくなり平衡(状態)に達するため[またはそういう物理プロセス]。

解説:平衡状態のくだりはわかると思いますが、光が鏡に反射される過程で、鏡が吸収するエネルギーは一定だとしておいても、鏡の温度が低いうちは放出する熱が低いために鏡は温められ続けることになり温度は上昇し、温度が高くなるにしたがって放出する熱が多くなりやがて吸収するエネルギーと等しくなり温度が上昇しなくなる。それが平衡状態である、ということです。物体の温度が高くなると放出する熱も多くなるというのが、シュテファンボルツマンの法則 \( I=\sigma T^4 \) です。先の説明で \( I = aT^4 \) としたのは、「単位面積あたり」から放出される電磁波、という本来のシュテファンボルツマンの法則の説明を省略して簡単にしたかったからです。〇〇〇〇 の答えは黒体放射(黒体輻射)。

 

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